自社でリスティング広告に取り組んでいる方、代理店として広告主からリスティング広告の提案を求められている方。「リスティング広告の予算っていくら?」こんな質問を受ける場面は多いのではないでしょうか。
純広告のように明確なコストが定められていないリスティング広告(クリック課金型広告)だからこそ、予算の考え方を知らない上司やクライアントから、こういった質問を受ける機会が多いのでしょう。
今回は、リスティング広告の施策で欠かせない「予算」について考えてみましょう。
目標CPAと目標コンバーション数から予算を算出する
リスティング広告の予算を決めるためには、まず目標とするCPAとコンバージョン数を考えます。
CPA(Cost Per Action/Cost Per Acquisition)とは、1件の成果獲得(CV/コンバージョン)にかかるコスト。「広告費用÷コンバージョン数」の計算式で算出できます。
「何件の成果獲得を目標とするのか?」を考え、そのうえで「1件の成果を獲得するための目標コスト」を設定。そのコストが達成できているかどうかを判断しながら、リスティング広告のメンテナンスを行っていくという運用フローになります。
そのため、上司やクライアントからの「リスティング広告にはいくらの予算が必要なの?」という質問は、大まかな予算を即答すべきものではなく、戦略を立てて導き出す必要があります。目標とする数値によって予算が変動する性質を持つリスティング広告の予算は、固定費ではなく変動費で捉えるほうが適しているといえます。
タイプ別予算の考え方について
それでは、具体的に販売する商品や提供するサービスごとに適した予算の考え方を見ていきましょう。
家電や高級ブランド品などの通販サイトの場合
家電や高級ブランド品などは、単価が高く且つリピート性の低い商材。頻繁に購入する日用品などとは異なり、1度購入するとしばらく購入アクションが起きない商品です。一般的には、購入後3ヶ月間でのリピート率が10%を下回る商材は、高単価で且つリピート性の低いタイプに分類されます。
こういった通販サイトでの目標CPAの考え方はシンプルで、
目標CPA=平均顧客単価-平均原価
の計算式から算出します。
顧客が購入する平均単価から購入される商品の平均原価を引く。要するに、粗利額が目標CPAとなるパターンです。
もちろん、販売する商品には原価以外にも固定費や人件費などのコストが含まれます。厳密に目標CPAを立てるためにはこれらのコストも考慮しましょう。また、目標CPAの計算式では、それ以上のコストがかかってしまうと赤字になるという最終ラインのコスト算出になります。そのため、上限CPAとして捉えることも重要な判断基準になります。
化粧品や健康食品・サプリメントなどの通販サイトの場合
化粧品や健康食品・サプリメントなどは、単品の商品購入がリピートされる商材です。多くの通販サイトはこちらのケースに該当します。
こういった通販サイトでの目標CPAの計算式は、
目標CPA= [ 平均顧客単価-平均原価 ] ×平均購入回数
となります。
単に粗利額で計算するのではなく、平均リピート回数も考慮したうえで目標CPAを算出します。
仮に、平均顧客単価が1,000円、平均原価が500円の場合、粗利額は500円となりますが、平均して顧客が5回リピート購入する場合、1件の顧客獲得で2,500円の粗利獲得につながります。そのため、2,500円という金額をベースに目標CPAを算出できるということです。
ちなみに、通販サイトの場合、「お試し無料」などをフックにし、本商品の購入獲得を狙うケースがあります。こういった場合は、「お試し無料」などのサンプルから本商品購入につながる割合を加味する必要があります。
その際の計算式は、
サンプルの目標CPA=[ 平均顧客単価-平均原価 ] ×本商品購入への引き上げ率×本商品の平均購入回数
となります。 多くの通販サイトでは、リピーター育成が利益アップのカギを握ります。平均購入回数が多ければ多いほど、顧客の顧客生涯価値(LTV/Life Time Value)が高まるため、目標CPAの許容ラインが高くなります。結果的に、競合他社と比べ強気な戦略を打ち出すことができるのです。
不動産情報サイトや転職情報サイトなどの場合
不動産情報サイトや転職情報サイトなどは、オンラインで売上が完結しないケースが多いもの。資料請求や問い合わせを受け付けたうえで、その後に営業アプローチを行い、成約が確定するというケースです。
こういったサイトでの目標CPAの計算式は、
目標CPA=オンラインでのコンバージョン数×平均顧客単価×売上発生までの成約率
で算出します。 リスティング広告の管理画面上で計測されるコンバージョン数が多くても、売上発生までの成約率が低ければ、利益確保につなげることが難しくなります。その反面、成約率を高めることができれば目標CPAの許容ラインが高まりますので、前述同様、強気な戦略を打ち出すことができます。
目標CPA達成後に検討すべきこととは?
リスティング広告の運用では、目標CPAをひとつのKPIとして設定し運用を継続します。が、売上拡大のためには、そこで留まることなく施策の拡大を狙いたいところです。目標CPA達成後に検討すべきポイントは、大きく次の2つです。
目標コンバージョン数拡大に向けての投資
効果的にリスティング広告を実施し、効率的なメンテナンスを継続すれば、目標CPAと目標コンバージョン数が達成できることは珍しくありません。その際、自社の生産設備やスタッフのリソースに限界がきてしまっては、売上拡大にストップがかかってしまいます。
施術を提供するサービスなら、1日に施術対応できる顧客数に限りがある。店舗の場合、1日に接客可能な顧客数に限りがある。宿泊施設なら、1日の宿泊客数に限りがあるなど、自社の状況によりどこかのタイミングで顧客獲得の手を止めざるを得ません。
リスティング広告から発生する利益を考慮し、生産設備や施設拡大の投資を行ったり、スタッフを増員しリソースを確保したりといったことも視野に入れ、ビジネスを拡大していく必要があります。
潜在顧客にもアプローチする
リスティング広告は検索連動型広告とも呼ばれ、顕在顧客の検索行動に応じて広告が出稿されるタイプです。基本的には、顕在欲求を持っているターゲットに対しアプローチする戦略です。
一方、ディスプレイ広告やSNS広告を活用すれば、商品やサービスに興味・関心を持っている段階の「潜在顧客」にもアプローチができます。
あくまで潜在顧客へのアプローチのため、リスティング広告よりは目標CPAを高く設定する必要がありますが、その後のリピート購入などにうまくつなげることができれば、優良顧客化することも不可能ではありません。
顕在層アプローチと潜在層アプローチの両方を視野に入れ、施策を展開していくことが、売上アップのポイントになるのです。
KPI達成には明確な予算設定が欠かせない
ご覧いただきましたとおり、リスティング広告の予算決定の際は、目標CPAと目標コンバージョン数の設定が欠かせません。それを明確な指標とすることで、日々のリスティング広告メンテナンスの方向性を導き出すことができます。
「リスティング広告の予算っていくら必要なの?」という質問に対し、明確なKPIを組み立て、的確な返答ができるよう、予算への理解を深めてみることをおすすめします。
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